おりものの異常から分かる「細菌性腟症」とは?

女性の正常な膣内には、腸内と同じようにさまざまな常在菌が存在し、「膣内細菌叢(フローラ)」を形成することで、他の病原菌が繁殖しないように防御しています。
常在菌のうち8~9割以上を占める乳酸桿菌(Lactobacillus属)は、膣粘膜上皮細胞内にあるグリコーゲンを分解して乳酸を産生し、膣内を酸性(pH 5.0以下)に保つことで雑菌の侵入を防いでいると考えられています。

しかし、ストレスや過度の洗浄、性行為などによって大腸菌やブドウ球菌などの複数の好気性菌や嫌気性菌が異常に繁殖すると、膣内フローラのバランスが崩れて膣の自浄作用が弱まり、「細菌性腟症」を発症します。
細菌性腟症は膣感染症の一つで、性感染症とは異なります。

症状としては、まず、おりもの(帯下)に異常がみられます。
急におりものの量が増えたり、おりものの状態が魚の生臭いような悪臭(アミン臭)を伴ったり、灰色で粘稠度が低い状態になったりします。

外陰部のかゆみや腫れ、下腹部の痛み、不正出血などの症状がみられる場合もありますが、多くは無症状で、気づかないうちに細菌性腟症に罹患しています。

さらに、妊婦が細菌性腟症にかかると、膣内細菌叢のバランスが乱れ、病原性細菌が上行して子宮内に侵入し、絨毛膜羊膜炎などを引き起こし、流産や早産、低出生体重児の原因となったり、分娩後の子宮内膜炎など出産時のトラブルと関連することが知られています

※日本性感染症学会編「性感染症 診断・治療ガイドライン2020」、診断と治療社、2020.

細菌性腟症の診断と治療法

細菌性腟症の診断では、おりものの性状に加えて、膣粘膜の炎症所見や、膣からの分泌物を採取して一般細菌検査を行います。

また、診断には、世界保健機関(WHO)の診断基準を用いた客観的な診断が勧められています。

WHO診断基準は、

膣分泌物の性状が薄く、均一である
膣分泌物の生食標本で、顆粒状細胞質を有するclue cellが存在する
膣分泌物に10%KOHを1滴加えたときに、アミン臭がある
膣分泌物のpHが4.5以上である

これら4項目のうち3項目以上に当てはまる場合に細菌性腟症と診断します。
また、腟トリコモナス症やカンジダ症、萎縮性腟炎などと鑑別します。

細菌性腟症は自然に治る場合もありますが、適切な治療により早期の症状改善が見込めます。一方で、再発も多くみられます。

治療は主に局所療法と内服療法を行います。

クロラムフェニコールなどの抗菌薬(膣錠や内服薬)を用いた局所療法(7日間)を基本とし、治療効果を高めるために生理食塩水で腟内を洗浄します。
場合によって、メトロニダゾールなどを用いた内服薬や外用剤を用いることもあります。

細菌性腟症予防するには?

細菌性腟症を予防するには、膣内の過度な洗浄などをせず、膣内フローラのバランスを保ち、膣内の環境を整えていくことが大切です。

また、膣内フローラが乱れる原因として、睡眠不足やストレスによる免疫機能の低下、抗菌薬の服用、性行為なども挙げられており、これらの要因を避けることも重要です。

女性のデリケートゾーンの悩みは「膣内フローラの乱れ」から起こるものとも言えます。
膣内フローラの環境を整えることで、おりものの過剰な分泌や臭いを抑える働きも検証されています。さらに、膣内フローラを正常に整える鍵が「乳酸菌」であることが研究で分かっています。

【参考資料】
日本性感染症学会編「性感染症 診断・治療ガイドライン2020」、診断と治療社、2020.