常在菌叢の構成には個人差があり、食事や生活環境などの環境要因や年齢などによっても変化することが知られています。

腸内細菌叢の構成には年齢により変化がみられます(下図参照)。

出典:光岡 知足. 腸内細菌学雑誌2011; 25(2): 113-124.

生まれたばかりの新生児は、腸内は無菌か、あるいは細菌はごくわずかだとされています(ヒトは母親の胎内にいるときから微生物の影響を受けている可能性も示唆されています)。

※Jiménez E et al.: Is meconium from healthy newborns actually sterile? Res Microbiol 2008; 159 (3): 187-193.

出生後には大腸菌や腸球菌などの酸素がなければ生きられない好気性細菌が増え始めます。出生後数日経つと、酸素がなくても生きられる嫌気性の乳酸桿菌やビフィズス菌などが現れ始めます。その後、乳児型のビフィズス菌が優勢となり、乳児の腸内細菌叢は安定します。
さらに、離乳が始まり母乳以外の食事を摂取するようになると、ビフィズス菌は乳児型から成人型に変わり、徐々にバクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性連鎖球菌などの嫌気性の日和見菌が優勢になり、腸内環境は成人期へと移行していきます。

乳児期までに形成される腸内細菌叢が免疫系の発達に影響を与えると考えられています。中でも幼少期の抗菌薬の使用は腸内細菌叢の構成に悪影響を及ぼすことが報告されています。

思春期には腸内環境への性ホルモンの影響も現れるようになり、男女差もみられるようになります。

成人期には腸内細菌の種類も数も豊富になり、より複雑な構成になります。
中高年になるとビフィズス菌が減少する一方で、腐敗菌の一つであるウェルシュ菌が増え始めます。ウェルシュ菌は体に有害な物質を産生し、体全体に悪影響を及ぼします。

カラダの健康を保つには腸内細菌叢のバランスを整えることが大切ですが、特に中年期を迎えたあたりから、そのことに注意していく必要があります。

【参考資料】
光岡知足著「人の健康は腸内細菌で決まる!―善玉菌と悪玉菌を科学する―」、技術評論社、2011.
 
安藤 朗. 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能. 日本内科学会雑誌2015; 104(1): 29-34.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_29/_pdf/-char/ja